Jovian-Cinephile1002’s blog

古今東西の映画のレビューを、備忘録も兼ねて、徒然なるままに行っていきます

『 トップガン マーヴェリック 』 -ライブ音響上映-

トップガン マーヴェリック 90点 
2024年4月17日 MOVIXあまがさきにて鑑賞 
出演:トム・クルーズ マイルズ・テラー 
監督:ジョセフ・コジンスキー

 

およそ1年半ぶりの劇場鑑賞。ライブ音響上映に惹かれてチケット購入。

あらすじ

マーヴェリック(トム・クルーズ)は、予定されていたダークスターのテスト飛行がキャンセルされると聞いたが、クルーと共にフライトを強行し、マッハ10を達成する。処罰の対象になるかと思われたマーヴェリックだが、盟友であり提督となったアイスマンの取り計らいにより、トップガンにおいて難関ミッションに挑む若きパイロットたちの教官となる。しかし、そこにはかつての相棒グースの息子、ルースター(マイルズ・テラー)も加わっており・・・

 

ポジティブ・サイド

ライブ音響上映ということで、冒頭のF-18の空母からの発艦、空母への着艦シーン、そこで流れる Danger Zone の音圧に文字通り押しつぶされそうに感じた。「映画の半分は音楽である」とは押井守の言だが、本作を鑑賞して氏の言葉の正しさがあらためて証明されたと感じた。要所で流れる Top Gun Anthem や、The Man, The Legend などの音量も爆音で聞くことで、こちらの感情の揺さぶられ方もより激しくなった。

 

何度も劇場鑑賞およびBlu-ray鑑賞したり、YouTubeで元&現役軍人が色々とコメントしたりしている動画を観ているので色々と粗が目に入りはするが、そんなものはどうでもいいと思えるほどの迫力がある。最も感動したのはF-14の離陸前のBGM、次に感動したのはマーヴェリックとルースターが空母に帰還するシーンのBGM。音響と音楽の持つインパクトは大きいのだなとあらためて感じさせられた。

 

ネガティブ・サイド

敢えて字幕に集中してみたが、結構ひどい。museum piece を骨董品と訳すのは漢字の制限があって難しいにしても、年代物とかではダメなのか。ポンコツはひどすぎる訳。フェニックスとハングマンの掛け合いもめちゃくちゃ。まあ、これは映画というよりも翻訳者の問題か。字幕翻訳はかくも難しい。

 

総評

面白いものは何度見ても面白い。日曜日に本作のサントラをいくつか Walkman に入れてしまった。『 オズの魔法使 』や『 テルマ&ルイーズ 』のように、傑作だという評価が定着している作品は、映像をリマスターするとか音響をパワーアップさせるなどして、劇場リバイバル上映をもっと頻繁に行っていいのではないだろうか。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Literally

「文字通りに」という意味。近年最も乱用されている英語の一つと言っても過言ではない。I literally died laughing out loud. = 笑い過ぎてホンマに死んだわ、のような感じで使われる。ということは日本語でも乱用および誤用されている?劇中では存在感ゼロだったボブが I’ve been here the whole time. と言い、それに対してハングマンが The man’s the stealth pilot. =ステルスのパイロットかよ、と反応したのを、その後にマーヴェリックがまったく同じようにハングマンとルースターに気づかれず、Been here the whole time. と言っていた。細かいところも面白い。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 貴公子 』
『 ブルックリンでオペラを 』
ゴジラxコング 新たなる帝国 』

 

現在、【英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー】に徐々に引っ越し中です。こちらのサイトの更新をストップすることは当面はありません。

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『 あまろっく 』 -尼崎市民、観るべし-

あまろっく 70点
2024年4月13日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:江口のりこ 中条あやみ 笑福亭鶴瓶
監督:中村和宏

 

尼崎市民としては鑑賞すべきだろうということでチケット購入。

あらすじ

東京でコンサルタントとして働いていた優子(江口のりこ)だったが、理不尽なリストラにより尼崎の実家に戻ってくることになった。自堕落な生活を送っていたところ、父の竜太郎(笑福亭鶴瓶)が20歳の早希(中条あやみ)と再婚すると言う。遥かに年下の義理の母の出現に困惑する優子だったが・・・

 

以下、マイナーなネタバレあり

 

ポジティブ・サイド

映画の宣伝で江口のりこがあまりにも無気力だったが、実際は頑張って演技していた。中条あやみも標準語の時よりも良い演技を披露できていたように思う。

 

家族とは何か。『 焼肉ドラゴン 』(この舞台は隣町の伊丹。ちなみにこの作品での焼肉の焼き方監修をした人が尼崎で商売をしておられる。山里食品ではない、念のため)でも追究されたテーマで、家族とはそもそも壊れて、新しく生まれる、あるいは作るものだった。

 

本作は65歳の男性と20歳の女性の再婚を通じて、年下の義理の母親はありなのか?適齢期を過ぎても結婚しないパラサイトはありなのか?シングルマザーに支えは必要なのか否か?

こうした新たな問いに一定の答えを出そうというのが本作である。赤の他人の優子と早希の距離が徐々に縮まっていく過程はユーモラスであり現実的でもある。

 

尼崎市民は観ていて楽しめるだろう。Jovianの家の目と鼻の先のうどん屋だったり、散歩コースのすぐ脇の工場が近松鉄工所だったり、魚釣り公園や寺町など、まさにご当地ムービー、おらが町の映画だと感じられた(阪急沿線民には不評かもしれない)。

ネガティブ・サイド

冒頭からいきなり「尼ロックなんか誰も知らんわ!」という台詞が聞かれるが、ホンマかいな。今も昔も尼崎市内の結構な数の小学校が社会科見学で尼崎閘門に行っているはずなのだが。

 

工場でとあるアクシデントが起きるが、工都・尼崎の工場職人がこんな杜撰なことをするんかな?ちょっと無理のある脚本に思えた。

 

ブランクが何年もあるはずの優子がいきなり第一線のコンサルタント然として話し出すシーンには違和感ありあり。普段から経済ニュースや経済紙に目を通していたという描写があれば、少しは説得力も生まれるのだが。

 

2018年の台風を元ネタにしたと思しきシーンがあるが、地元民としては少し複雑。尼ロックが水害を防いだのは確かだろうが、あの時はとんでもない暴風被害が出て、杭瀬の工務店のおっちゃんが「2か月で3年分の仕事量や!」と特需を享受していた。フィクションだと思えばいいのだろうが、だったら阪神淡路大震災を持ち出すのもやめてほしかった。

 

ハルカの陶 』でも思ったが、地理がめちゃくちゃ。まあ、突っ込んでも意味がないんやけどね。ただJR沿線民と阪神沿線民は楽しいはず。

 

総評

実際は60点だが、地元民のよしみで10点おまけしておく。某映画サイトでやたらと高評価されているが、これは兵庫県民、特に尼崎市民が先行上映を観て星を与えていることに注意されたし。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

complete strangers

「赤の他人」の英訳。他にも total strangers という表現もある。劇中では「あんたと私は赤の他人や!」というのがあったが、英語だと You and I are complete strangers! となるだろうか。間違っても red strangers とは言わないように。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 貴公子 』
『 ブルックリンでオペラを 』
ゴジラxコング 新たなる帝国 』

 

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『 パスト ライブス/再会 』 -初恋は実らない-

パスト ライブス/再会 65点
2024年4月7日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:グレタ・リー ユ・テオ
監督:セリーヌ・ソン

 

大学開講の第1週で多忙につき、簡易レビュー。

あらすじ

12歳のノラ(グレタ・リー)とヘソン(ユ・テオ)は互いに思いあっていたが、ノラの両親のカナダ移住に伴って離れ離れになってしまう。24歳でオンラインで再会を果たす二人だったが、やがて疎遠になってしまう。そして36歳、ヘソンは休暇でニューヨークを訪れ、ノラと再会することになり・・・

ポジティブ・サイド

監督の自伝的要素が非常に強く、パーソナルな面で突き刺さるものが多かった。特に Facebook のような Social Media でかつての知人友人を見つけて連絡が取れてしまうというのは過去にはありえない、現代に特有の事象。似たような経験があるという30代、40代、50代は多いのではないだろうか。

 

イニョンという考え方はアジア、特に仏教圏、輪廻転生の概念が普及している地域の人間には分かりやすい。イニョンとはいわゆる縁起のこと。本作がアカデミー賞にノミネートされたというのは、ここらへんがアメリカ人に新鮮だったのもあるからでは?

 

ヘソンとアーサーの距離感、またノラとアーサーの距離感が絶妙だった。アメリカ人がアメリカで異邦人の気持ちになる。これもアカデミー会員の心の琴線に触れたシーンかなと思う。

 

ネガティブ・サイド

男はいくつになっても男の子のままというある種の偏見を飲み屋に集まる変わらない面々で描くというのは少々芸がないと感じた。いや、これも一種の同族嫌悪かな。

 

結局のところ、両親のエゴに振り回された子どもたちの話だったのでは?という印象が拭えなかった。割と引っ越しばかりで、それが嫌だった自分が強く思い出されたからな気がしないでもないが。

 

総評

僕の好きな女の子 』をもっとドラマチックに、もっと哲学的にしたものだったなという印象。運命というにはあまりにも淡すぎて、悲恋というのはあまりにも濃い。ぜひパートナーと鑑賞してほしい。Jovianと妻の感想は多くの点で非常に対照的だった。逆に結婚という因習は、そうした互いの違いから以下に目をそらし続けるのに役立つかということが逆接的に感じられるかもしれない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Lives

lifeの複数形は正しくはライブズとスではなくズとなる。Black lives matter もブラック・ライブズ・マターと報じられていた。一方でワーナー・ブラザースのように、公式にズではなくスを使っている組織もある。まあ、発音は正確に越したことはない。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 あまろっく 』
『 貴公子 』
『 ブルックリンでオペラを 』

 

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『 オッペンハイマー 』 -伝記映画の傑作-

オッペンハイマー 80点
2024年4月6日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:キリアン・マーフィ
監督:クリストファー・ノーラン

 

ソウルメイト 』や『 続・夕陽のガンマン 地獄の決斗 』を立て続けに鑑賞して、やや面白不感症気味になっていたが、本作はめちゃくちゃ面白かった。

あらすじ

物理学者のロバート・オッペンハイマーキリアン・マーフィ)は、第二次世界大戦中のアメリカでマンハッタン計画の責任者に任命される。職務に邁進するオッペンハイマーだが、複雑な人間関係や敵対国ドイツ、同盟国ながら共産主義国家であるソ連との競争にもその身を投じていくことになり・・・

ポジティブ・サイド

なんとも重厚かつ長大な物語だった。オッペンハイマー目線での過去と現在が頻繁に行き来し、なおかつ科学者としてのオッペンハイマーだけではなく家族人(だが決して典型的なファミリー・マンではない)として実像や、一人の男として、あるいは軍事や政治におけるポスター・ボーイとして、あらゆる面が映し出されていた(ちなみに本作が鑑賞しづらかったという向きには『 インセプション 』を観てからの再鑑賞をお勧めする)。まさに伝記映画の超大作だった。

 

冒頭から原子の世界のイメージや恒星の活動や死滅のイメージがオッペンハイマーの頭の中でありありと生起されていくところが観客に共有される。これだけ想像力豊かな人物が広島や長崎で起きたことを想像できなかったということの重みは計り知れない。「原爆被害に対する描写がないのはけしからん」と気色ばむ方々は、まず第一に本作はオッペンハイマーの伝記であって、彼は戦時中、あるいは戦争直後に日本を訪れていないということを知るべきだ。また作中でも色濃く描かれているが、オッペンハイマーは非常に想像力豊かな人間で、外国に対して関心と敬意を抱き、自らのユダヤ系のルーツから差別に対しても寛容ではなかったと描かれている。そんな彼がヒロシマナガサキの惨状を頭の中で思い描けなかったということは、繰り返しになるが、それだけ重いことなのだ。

 

実は国際基督教大学の第一男子寮の一つ上の先輩がロスアラモスで研究員をやっている(ちょっとググれば出てくるし、ご本人も全く隠していない)。2023年11月にその先輩たちとZoom飲み会をした際に、本作の出来(≠内容)やアメリカでの受け止められ方を少しだけ聞くことができた(が、それは興味のある人が自身で調べればいいだろう)。

 

Jovian自身は大学時代に多くの留学生たちと一緒に『 火垂るの墓 』を鑑賞した後、とあるアメリカ人から “Why did you not surrender earlier?” と言われたこと、そして前の職場の同僚アメリカ人に “If Japan had nuclear weapons, they would have used them.”(アメリカ人は仮定法を正しく使えないのだ)と言われたことは、今でもはっきり覚えている。 一部の日本人は自分たちが戦争の被害者として正しく扱われていないと感じたいようだが、自分たちに自分たちなりの歴史認識があるように、相手にも相手なりの歴史認識がある、ということは理解すべきだ。

 

あまり映画の感想になっていないが、ヒロシマナガサキに続いて福島がフクシマになりかけた日本は、オッペンハイマーの想像した破滅のビジョンに対してもっと敏感であってしかるべきと思う。批判する前に鑑賞しよう。鑑賞してから批判しよう。

ネガティブ・サイド

当時のロスアラモスにも間違いなく「研究できればそれでいいや」というマッドサイエンティストがいたはず。そうした無邪気な(だからこそタチが悪い)科学者とオッペンハイマーの対比が欲しかった。そこの描写は不十分であったように感じた。

 

アカデミーが助演男優賞を送るとしたら、ダウニー・Jr よりマット・デイモンの方がふさわしかったのではないだろうか。

 

総評

180分という上映時間も2時間程度に感じられた。それだけ密度の濃い映画だった。オッペンハイマーの生涯を描いた本作からは様々な教訓が得られる。それは観る人の年齢、性別、職業、問題意識によって異なる。一つ言えるのは「想像力を持つこと」の重要性。より良い未来を想像するのか、より悪い未来を想像するのか。自分の仕事や人生について深く考えるきっかけをもたらしてくれる傑作である。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Your reputation precedes you

直訳すれば「あなたの評判はあなたに先行しています」で、あなたがここに来るより先にあなたの評判が届いていますよ、ということ。『 トップガン マーヴェリック 』でもサイクロンがマーヴェリックに全く同じセリフを言っていた。ちょうど異動の季節なので、噂の新戦力がやって来た時などに使ってみよう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 変な家 』
『 パスト ライブス/再会 』
『 あまろっく 』

 

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『 続・夕陽のガンマン 地獄の決斗 』 -20世紀最高傑作のひとつ-

続・夕陽のガンマン 地獄の決斗 100点
2024年3月30日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:クリント・イーストウッド イーライ・ウォラック リー・ヴァン・クリーフ
監督:セルジオ・レオーネ

 

続・夕陽のガンマン 』の劇場再上映。『 オッペンハイマー 』の劇場公開期間はまだ続くだろうが、本作は今を逃すと一生観られないかもしれない。ということでこちらのチケットを購入。

あらすじ

時はアメリ南北戦争の最中。賞金稼ぎのブロンディ(クリント・イーストウッド)と賞金首のトゥーコ(イーライ・ウォラック)、そして北軍士官のエンジェル・アイ(リー・ヴァン・クリーフ)の3名は、20万ドルもの大金がどこかに隠されていることを知り、互いに協力し、互いに出し抜きあい、金貨の隠し場所を探っていき・・・

ポジティブ・サイド

キャラ、ストーリー、演出、撮影、音楽など、すべてが完璧。4Kではなく2Kで劇場鑑賞したのも良かったかもしれない。3時間弱もなんのその。うちの親父は十三の映画館で公開当時に観たと言っていたが、同じ経験ができたのは嬉しい。

 

3人のキャラが立っているのが素晴らしい。The Good のブロンディも実は全然良い奴ではないし、The Bad のエンジェル・アイも自分なりの正義を貫く男。卑劣漢(この訳はすごい)のトゥーコの優れたプロフェッショナリズムと隠れた家族愛。この3人は表情だけで物語れるのだ。

 

本作のストーリーや演出がもたらした影響は途轍もなく大きい。観ていて「あ、あの映画のあのシーンはここからインスパイアされたんだな」と感じるシーンが随所にある。最も分かりやすいには、ハン・ソロがグリードをテーブル下から射殺するシーン。あれはエンジェル・アイのオマージュだろう。

 

この時代はフィルム撮影なので、撮ったその場で再生することには色々と制約があったはず。なので、役者もそんなに簡単にNGは出せない。しかし、本作ではロングのワンカットがかなり多用されている。前にも述べたが、トゥーコがガンショップであれこれと吟味するシーンや砂漠でボトルを放り投げて、そのボトルが砂丘の斜面を絶妙に転がっていくシーンなどは、今見ても鳥肌が立つほど素晴らしい。

 

そして何といってもエンニオ・モリコーネの音楽が圧倒的な臨場感と没入感をもたらしている。テーマ音楽の笛の根だけで無限の荒野を前進している気分になれるし、The Ecstacy of Gold を背景にサッドヒル墓地を駆け回るトゥーコはまさに黄金の魔力に憑りつかれた男の欲望の強さ、人間の本能的なものと、一つの旅の終着点にたどり着いた哀愁の両方を感じさせる。決闘シーンの The Trio の雄大さは言わずもがなだが、途中で挿入される『 夕陽のガンマン 』のオルゴールの旋律と、その後に続く銃声の数々、そこに3人の表情を映し出すことで、それぞれが過去に行ってきた決闘の数々を観る側に想起させる。徹底的にビジュアル・ストーリーテリングに徹するセルジオ・レオーネのまさに面目躍如だ。

 

劇場再公開期間中にできるだけ多くの人に鑑賞してほしい。鑑賞後は『 サッドヒルを掘り返せ 』も観てみよう。

 

ネガティブ・サイド

なし。

 

総評

バック・トゥ・ザ・フューチャー 』シリーズの大ファンであるJovian妻は『 荒野の用心棒 』は知っていたが、本作は初見。それでもかなり面白いと感じてくれた(第一声が「まあまあやな」だが、これは最大級の賛辞)。『 オズの魔法使 』や『 テルマ&ルイーズ 』を観た時にも感じたが、映画館はもっと名作のリバイバル上映をやっていい。コロナ禍でのジブリ映画の再演が好例。『 風と共に去りぬ 』とか、それこそ『 用心棒 』は、ぜひ大画面と大音響で鑑賞したい。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

follow ~ through

~を完遂する、の意。劇中ではエンジェル・アイが When I’m paid, I always follow my job through. = 「報酬を受け取ったら、常に依頼を完遂するのが俺だ」みたいなことを言っていた。テニスやゴルフは打つ前にテイクバックを行い、球を打ち、フォロースルーをしっかり行う。このイメージで覚えよう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

オッペンハイマー
『 梟ーフクロウー 』
『 12日の殺人 』

 

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『 デューン 砂の惑星 PART2 』 -チャニがあまりにも可哀そう-

デューン 砂の惑星 PART2 65点
2024年3月24日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ティモシー・シャラメ ゼンデイヤ
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ

 

DUNE デューン 砂の惑星 』の続編。大学開講前の超絶繁忙期なので簡易レビュー。

あらすじ

ポール・アトレイデス(ティモシー・シャラメ)は、砂漠の民フレメンの助力を得て、ハルコンネン家に反撃を開始していく。チャニ(ゼンデイヤ)と心を通わせつつも、フレメンの預言にある救世主として振る舞う中で、チャニとの距離は離れていく。そこにハルコンネン家から最強の刺客、フェイド=ラウサが送り込まれ・・・

 

ポジティブ・サイド

前作からのラバーンがどう見てもプロレスラーのパティスタのイメージ通りの脳筋男で、個人的には「うーむ」だったが、今作ではオースティン・バトラー演じるフェイド=ラウサがヴィランとしては良い感じ。超文明を誇る世界観の中で決闘に応じる高貴さと雄々しさ、そして何よりも狂気が感じられて素晴らしい。悪役が輝かないと、主役が輝けない。本作のMVPはフェイド=ラウサで決まり。

 

すべてを失ったポールが、チャニと接近して、しかし逆にすべてを手に入れていく過程でチャニと離れていく。チャニの切なさが言葉ではなく表情やしぐさで痛いほどに伝わってくる。ポリコレ的にはアレだが、男社会で上り詰めていく男を、女は距離をとって眺めるしかないのか。『 グレイテスト・ショーマン 』でもそうだったが、ゼンデイヤはこういう役がよく似合う。

 

ネガティブ・サイド

映像に既視感ありあり。フレメンの居住区などは『 ブレードランナー2049 』とそっくり。宇宙船も『 メッセージ 』を髣髴させるばかり。

 

BGMも、これまた良くも悪くもハンス・ジマーという感じ。

 

ゴジラ‐1.0 』で冒頭5分でゴジラが出てきたように、今作も開始5分で巨大サンドワームを出してほしかった。

 

総評

良くも悪くもヴィルヌーヴの作品という感じ。つまり映像美は文句なし。ただ観る側が慣れてきた感があるのは否めない。ただ野望に燃える男と、そんな男から離れていかざるを得ない女というドラマは、陳腐ながらも非常に楽しめた。三作目はいつ公開だろうか。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

None of your business

チャニのセリフだったかな。直訳すれば「あなたの仕事では全くない」だが、実際の意味は「お前の知ったこっちゃない」ぐらいか。割と強めの表現なので言い方と、これを言う相手との関係性には注意のこと。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 梟ーフクロウー 』
『 12日の殺人 』
続・夕陽のガンマン 地獄の決斗

 

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『 ゴールド・ボーイ 』 -韓国でリメイク希望-

ゴールド・ボーイ 60点
2024年3月17日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:羽村仁成 岡田将生
監督:金子修介

 

ガメラ 大怪獣空中決戦 』、『 ガメラ2 レギオン襲来 』、『 ガメラ3 邪神<イリス>覚醒 』の三部作で名高い金子監督の作品ということでチケット購入。ゴールド・ボーイというのは金子監督の謂いかと思ったが、そうではなかった。

あらすじ

大企業の会長の入り婿である東昇(岡田将生)は、義理の両親の転落事故に偽装して殺害する。しかし、偶然にも安室朝陽(羽村仁成)ら3人の少年少女がその凶行を動画に捉えていた。3人は東を脅迫して、大金をせしめようとするが・・・

 

以下、マイナーなネタバレあり

 

ポジティブ・サイド

悪 vs 悪という構図は『 最後まで行く 』のように、それ自体はそこまでユニークではない。大人と子どもの対立の構図も『 ぼくらの七日間戦争 』以来のお馴染みのテーマ。ただ、悪 vs 悪の片方を未成年にして、その心の闇を徐々に浮彫にしていくという筋立てはなかなかにユニーク。

 

なにげなくカメラを使っていたら、映ってはいけないものが映ってしまったというのは現代的。不謹慎かもしれないが、本作を鑑賞して天橋立の転落事故(事件と言うべきか?)を思い起こした人も多いことと思う。至る所にカメラがある。あるいは誰もがカメラを持っているという時代であることが冒頭で強く示唆される。この伏線が終盤に効いてくる。

 

舞台が沖縄というのも興味深い。中盤に「どうやってそのアイテムを入手した?」と思わされるシーンがあるが、ここは沖縄。ごくまれに挿入される軍用機の飛行シーンが観る側の想像を膨らませる。

 

未成年3人組が13~14歳という設定も絶妙であると感じた。『 カランコエの花 』の中川監督は、大人は嘘をつく、子どもは嘘をつかないと喝破したが、本作の主人公の朝陽はこの意味ではまったく子どもではない。そこが上手いと感じた。『 終末の探偵 』でもそうだったが、子どもは時に大人の予想を良い意味でも悪い意味でも軽々と超えてくる。さて、本作の子どもは前者なのか、後者なのか。それは実際に鑑賞の上、確認をされたし。

 

ネガティブ・サイド

ストーリー全体のテンポに文句はないが、細部のリアリティがめちゃくちゃである。突っ込みだすときりがないが、特に気になった点だけ挙げれば、まずは浩のカツアゲ。あんなもん、普通は速攻で補導される。高校生が交番に駆け込んだら、おそらくその日のうちに捕まるはず。

 

次に自傷行為。しっかりした監察医が沖縄にいるのかどうかはさておき、警察官もとあるキャラの腕の傷の方向や深さ、犯人と思われる人物の身長や利き手などから、すぐに疑問を抱くに違いない。韓国映画の警察ではないのだから、ここでは明晰とされるそのキャラの頭脳をもっと駆使してほしかった。

 

もう一つはとある死体について。犯行から発見まで1か月半ほど経過していて、あんなにキレイなままでいるか?それ以上に顔がおかしい。なんで無傷?

岡田将生は演技が過剰。羽村仁成は不気味さが不足。金子監督は怪獣は巧みに演出できても、サイコパスは演出できないのだろうか。

 

総評

日本でもだんだんと社会の闇に迫る映画が作られるようになってきたのは好ましい傾向。ただし、本作に関して言えば残念な点も多い。原作は中国のドラマということだが、韓国でもリメイクしてくれないだろうか。彼の国ならもっとバイオレントで、もっとサイコな展開がてんこもりの物語に仕上げてくれそう。某サイトで星4つだが、実際は星3.2といったところだろうか。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

chew up the scenery

大げさに演じる、過剰に演技するの意。日常会話で使うかどうかは、その人が芝居や映画、ドラマの話をどれだけするのかによる。使い方としては I love how Nicholas Cage chewed up the scenery in this film. のような感じ。決して岡田将生の演技がニコラス・ケイジのようだと言っているわけではない。念のため。

 

次に劇場鑑賞したい映画

デューン 砂の惑星 PART2 』
『 梟ーフクロウー 』
『 12日の殺人 』

 

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