Jovian-Cinephile1002’s blog

古今東西の映画のレビューを、備忘録も兼ねて、徒然なるままに行っていきます

『 マーズ・ミッション2042 』 -中国発の竜頭蛇尾のSF-

マーズ・ミッション2042 15点
2022年12月1日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:スオ・シャオクン
監督:リウ・ナー

ムーンインパクト 』がアホ極まりないUSA産SFだったので、ならば中国産はどうか?とということで近所のTSUTAYAでレンタル。竜頭蛇尾のダメSFだった。

 

あらすじ

火星移住計画が進行中の2042年。中国やアメリカは火星の軌道上および地表で様々な実験や研究を行っていた。そんな中、火星に小惑星が接近しているとの報が入る。時を同じくして、火星に謎の生命体が出現。地表探査チームは宇宙船で脱出するが、巨大生物に襲われ不時着を余儀なくされる。アメリカは中国に救助を要請。中国のエウロパ探査宇宙船ワン・フー乗組員は火星に着陸するが・・・

 

ポジティブ・サイド

冒頭の15分は『 オデッセイ 』そのまんま。マット・デイモンが火星に取り残されてしまうシークエンスを中国が再構成してみた、という感じ。word for word, scene for scene の再構築ではないが、明らかにオマージュのレベルを超えている。こうした姿勢は悪くないと思う。技術的に進んだ相手の手法をそのまま真似てみるというのは、芸術を学ぶ上で不可欠。模写はその最たる例。映画でもそういう試みはあっていい。

 

火星の大気中を遊泳するクジラはなかなかの迫力。アメリカ人が宇宙生命体を描くと『 ライフ 』のカルヴィンのようなクリーチャーになってしまうが、中国が描くクジラやトカゲはアジア的なセンスが素直に反映されていて、個人的には受け入れやすい。

 

ネガティブ・サイド

科学的な考証は無きに等しい。いちいちツッコミを入れるのも馬鹿らしいが、火星と地球の距離を考えろ。『 オデッセイ 』がなぜあれほどハラハラドキドキとヤキモキした感じを生み出せたのか。それは通信に要するタイムラグ。地球と火星で通信すると、往復で30分弱かかる。それが本作ではリアルタイムに通信できている。超光速通信だ。そんな技術があれば、火星のテラフォーミングなど、とっくに達成されていそうに思えるが。

 

アメリカ人を悪者にするのは別にOK。アメリカもソ連やロシア、中国などを散々悪者に描いてきた。問題は、アメリカ人の研究者個人が悪いのであって、アメリカが悪いのではないという描き方。もっと踏み込んでええんやで、中国さん。せっかくの宇宙SF。もっとスケールの大きい話しようや。また中国人俳優の中で英語を喋るのが1~2人しかいない。韓国やインドをもっと見習って、俳優に語学を勉強させるべき。エンタメ分野でも世界制覇を目指すなら英語は今後マストだろう。邦画は無理でも、中国映画界にはそのポテンシャルがあってしかるべき。

 

俺の屍を越えてゆけ的な展開が短時間で二度発生。これは萎える。こういう感動の押し売りが受け入れられるのは一つの映画につき1回までと心得よ。また最後は父と息子の葛藤と和解の物語に着地してしまうが、そこに至るまでの人間ドラマの描写が圧倒的に弱い。冒頭の展開だけで脚本家が力尽きて、予算も使い果たしのだろうか。

 

総評

一言、ダメ映画である。冒頭シーンの迫力に期待を持ってはいけない。そこがピークである。a rainy day DVD にもならない。小説『 三体 』が世界を席巻して以来、中国発のSFの良作を待っているが、まだまだ時間がかかるのかもしれない。配信やレンタルで見かけてもスルーするのが吉。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Sorry, no lessons. Hardly anything was impressive after the first 15 minutes.

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 サイレント・ナイト 』
『 母性 』
『 グリーン・ナイト 』

 

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