Jovian-Cinephile1002’s blog

古今東西の映画のレビューを、備忘録も兼ねて、徒然なるままに行っていきます

『 少女は卒業しない 』 -鮮烈な青春の一瞬-

少女は卒業しない 70点
2023年3月11日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:河合優実 中井友望 小野莉奈 小宮山莉渚
監督:中川駿

簡易レビュー。

 

あらすじ

廃校と取り壊しが決まっている山梨の高校。山城まなみ(河合優)、作田詩織(中井友望)神田杏子(小宮山莉渚)、後藤由貴(小野莉奈)は、卒業を目前に控えながら、それぞれに秘めた想いをなかなか形にすることができず・・・

ポジティブ・サイド

キャスト全員がアイドルではなく、ちゃんとした役者である。特に印象に残ったのは作田詩織を演じた中井友望。関西のいくつかの大学で教えることがあるが、こういう子は一定数存在する。ペアワークやグループワークを呼び掛けても無言または無反応。ただし、授業の終わりに講師にちょっとした質問だけをしに来る。藤原季節演じる教師が、また良い味を出している。

 

主役はまなみだろうか。『 佐々木、イン、マイマイン 』以来、彼女の出演作は定期的にチェックしているが、本作でも鮮烈なインパクトを残した。表情や声の使い分けが素晴らしい。ちなみに、まなみの想い人の登場シーンに「ん?」と感じたが、これは非常にフェアな演出。

 

最後は不覚にも森崎という男子生徒に二重の意味で泣かされた。二重というのは「その歌声の美しさ」と「その歌声が駿に届いていた」ことを指す。久々に邦画で well up した気がする。

 

ネガティブ・サイド

場面と場面のつなぎが、やや乱暴なところが見受けられた。4組の男女のオムニバス形式なのだから致し方ないとも言えるが、静寂のシーンから大音量シーンに転換するのはいただけない。もう少し各シーンの余韻を大事にしてほしいものである。

 

やや台詞に頼り過ぎかなと感じた。『 ここは退屈迎えに来て 』の成田凌が「ずっと高校生でいたい」というのと同じ独白を由貴がするのは、なんか違うなと感じた。開花する前の桜の木々を物憂げに見つめる。そんな演出は追求できなかったか。

 

総評

青春映画の秀作。タイトルの『 少女は卒業しない 』というのは、少女時代を忘れないということだろう。男は基本的に全員アホであるため、野郎同士が再会すればすぐに少年に戻ってしまう。『 くれなずめ 』が好例だ。本作は逆に、淡い想いに決着をつけて、前に進んでいく少女たちの物語。劇場で上映している間に、ぜひともチケット購入を!

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

commencement

卒業=graduation で覚えている人も多いと思う。ぜひもう一つ、commencementも押さえてほしい。graduationは卒業に至るまでの過程に重点を置くのに対し、commencementは修了そのもの、さらにそれが含意する「何か新しいことの始まり」も意味する。年配のテニスファンなら、松岡修造が引退会見で「これはコメンスメント、終わりであると同時に始まりである」という趣旨の発言をしたことを覚えておられると思う。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 湯道 』
Winny
『 シン・仮面ライダー

 

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