Jovian-Cinephile1002’s blog

古今東西の映画のレビューを、備忘録も兼ねて、徒然なるままに行っていきます

『 YOLO 百元の恋 』 -オリジナル越えの傑作-

YOLO 百元の恋 80点
2024年7月16日 Tジョイ梅田にて鑑賞
出演:ジア・リン ライ・チァイン
監督:ジア・リン

 

『 百円の恋 』の中国リメイク。『 ソウルメイト 七月と安生 』が『 ソウルメイト 』としてリメイクされたのと同じくらいの、リメイク成功と言える。

あらすじ

ドゥ・ローイン(ジア・リン)は一度は就職したものの、すぐに離職。以来10年間、実家で親のすねかじりをしていたが、妹と大ゲンカしたことでローインは衝動的に家を出る。ある時、ひょんなことから知り合ったボクサーのハオ・クン(ライ・チァイン)への思慕から、ローインはボクシングジムに通い始め・・・

ポジティブ・サイド

『 百円の恋 』の安藤サクラも痛々しいキャラ設定だったが、本作のローインはそれに加えて100キロの巨体。恋人も親友もいるが、実はその二人が自分に隠れて付き合っているという、笑うに笑えない状況で物語は始まる。このあたりはオリジナルに上手く「肉付け」しているだけだが、中盤でローインが妹の提案に乗って、とある仕事を引き受けたあたりから「呆れるほどに痛く」なる。

 

そして突如として鳴り響く、あの楽曲!そして、春夏秋冬、トレーニングを通じてみるみる痩せてゆくローインをこれでもかと映し出す。これまでのボクシング映画が実はほとんどフォーカスしてこなかった、文字通りの意味での迫真の減量である。壮絶とはまさにこのこと。ロバート・デ・ニーロもこれは称賛するに違いない。

 

そしてローインの初の試合。ここでは『 クリード チャンプを継ぐ男 』にもあった、1ランドすべてをワンカットで見せる手法を採用。ジア・リンは監督としても相当に先行作品をリスペクトしているようである。

 

最後は『 プラダを着た悪魔 』のアン・ハサウェイよろしく、颯爽と去っていくローイン。このあたりもオリジナルと同じではあるが、カタルシスの度合いはこちらの方が上。奔放の駄作『 レッドシューズ 』も、せめてこのような絵作りが出来ていれば評価ももう少し上がっただろうにと思わされた。

 

エンドクレジットでは、ジア・リンがローインになっていくシーンが克明に映し出される。『 百円の恋 』の試合前の入場シーンは安藤サクラの悲壮感と決意が前面に出ていて印象的だったが、本作ではそこ「生まれ変わり」のシーンだったのだなということが、より鮮烈な印象を伴って想起された。

 

ネガティブ・サイド

あの彼氏と親友には最終盤にもう一度だけ出てきてほしかった。

 

総評

傑作。『 百円の恋 』を観ていなくても楽しめるし、鑑賞済みであればもっと楽しめる。「あの音楽」を聞いて自動的にアドレナリンが出るような人は、今すぐにでもチケットを購入して劇場鑑賞してほしい。中国映画界はハリウッドや邦画からも学ぶ姿勢が見られるが、それは「近いうちに追い抜いてやる」という意思表示に他ならない。韓国映画に抜かれて久しい日本の映画業界だが、中国映画界に本格的に

 

Jovian先生のワンポイント中国語レッスン

ジエと発音する。「姉」の意。劇中で何度かローインがこう呼ばれる。日本語でも姉の「し」と読むので、なんとなく音も近く感じる。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 朽ちないサクラ 』
『 キングダム 大将軍の帰還 』
『 フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン 』

 

現在、【英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー】に徐々に引っ越し中です。こちらのサイトの更新をストップすることは当面はありません。

I am now slowly phasing over to https://jovianreviews.com. This site will continue to be updated on a regular basis for the time being.