Jovian-Cinephile1002’s blog

古今東西の映画のレビューを、備忘録も兼ねて、徒然なるままに行っていきます

『 聖闘士星矢 The Beginning 』 -原作を読み違えている-

聖闘士星矢 The Beginning 30点
2023年5月2日 大阪ステーションシティシネマにて鑑賞
出演:新田真剣佑 マディソン・アイズマン ショーン・ビーン ファムケ・ヤンセ
監督:トメック・バギンスキー

 

妻が観たいと言うのでチケット購入。駄作だろうと思っていたが、その予感は正しかった。

 

あらすじ

地下格闘技を生業にする星矢(新田真剣佑)は、ある時「小宇宙(コスモ)」を発揮する。そのことからアルマン(ショーン・ビーン)と出会い、自身がアテナの生まれ変わりであるシエナマディソン・アイズマン)を守る聖闘士だと知ることになり・・・

 

ポジティブ・サイド

コスチュームデザインは許容範囲。何もかも漫画通りだと動くに動けない。そのなかでも魔鈴さんの聖衣のデザインは原作に忠実で良かった。

 

漫画では常に受け身で、冥王ハーデス編まで戦わなかったアテナだが、今作では神の力を出し惜しみしなかった。

 

一番の驚きは辰巳=マイロック。漫画の方では冷酷かつギャグキャラというポジションのおっさんだったが、本作ではブラック聖闘士を次々に撃退するという、超絶有能執事兼ボディーガードに生まれ変わった。この愛をほんの少しでも何故、星矢に注いでやらなかったのか・・・

ネガティブ・サイド

タイトルの The Beginning からして続編を作る気満々らしいが、これが導入では、とてもその機運は盛り上がらないだろう。製作者や脚本家、監督は漫画『 聖闘士星矢 』の魅力を読み違えているとしか思えない。

 

第一に、聖闘士星矢の面白さの源泉は小宇宙(コスモ)にある。そして、小宇宙の強さは見た目に関係ない。原作で瞬が秘密にしていた実力を披露して、師匠の聖衣をバラバラに砕いたところで、当時の読者も後の読者もびっくりしたのだ。今作では無駄に筋肉の鎧をまとった真剣佑にケンカ自慢のチンピラ(こいつがカシオスかよ・・・)のバトルがメインで、思わず「それは小宇宙の本質ちゃうがな・・・」と思いながら鑑賞していた。

 

第二に、聖闘士星矢の魅力は孤独と仲間の発見である。原作では紫龍や氷河たちは異母兄弟でありながら、数々の激闘を通じて本物の兄弟たちになっていく。友情・努力・勝利という少年ジャンプ的な黄金律のひとつ、友情を兄弟愛にまで昇華させた、その熱量が本作には決定的に欠けていた。

 

第三に、技名を大袈裟に叫びながら必殺技のポーズを決める、あの原作漫画の様式美が一切再現されていなかった。大画面でペガサス流星拳や鳳翼天翔を英語で絶叫しながら放つビジョンは監督の頭の中になかったのか。それがないのなら、そもそも監督したらアカンよ。

 

他にも戦闘ヘリがクルマをチェイスしたりといったアクション・シークエンスはそもそも馴染まない。せっかくギリシャ神話の世界観を現代に持ち込んでいるのに。

 

CGがしょぼい。製作費がウン十億円らしいが、キャストにそこまでカネはかかっていないはず。だとすれば裏方だが、この低クオリティCGは何なのか。幻魔拳とか、ほとんど何も見えなかったのだが。

 

総評

原作ファンを喜ばせようという気持ちではなく、真剣佑を売り出そうという思惑で製作されたようにしか見えない。次作があるとして、そこでギャラクシアン・ウォーズ?その後に二部作で聖域十二宮編?聖闘士星矢の魅力をしっかり引き出せる脚本家を探すのが急務だが、一作目からこれでは先が思いやられるとしか言いようがない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

swear allegiance to ~

~に忠誠を誓う、の意味。同じ意味で pledge allegiance to ~ も使われるが、使用頻度は swear の方が高い。Do you swear allegiance to the Emperor? という時代に回帰しないようにしてほしいかな。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー 』
『 放課後アングラーライフ 』
『 不思議の国の数学者 』

 

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