Jovian-Cinephile1002’s blog

古今東西の映画のレビューを、備忘録も兼ねて、徒然なるままに行っていきます

『 BAD LANDS バッド・ランズ 』  -社会の底辺の連帯-

BAD LANDS バッド・ランズ 55点
2023年9月30日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:安藤サクラ 山田涼介 生瀬勝久
監督:原田眞人

 

安藤サクラ主演ということでチケット購入。

あらすじ

大阪で特殊詐欺グループで三塁コーチ役を務めるネリ(安藤サクラ)は、大阪・西成で底辺の人々と暮らしていた。彼女は組織の番頭、高城(生瀬勝久)の元で警察の捜査をかいくぐって生きてきた。ある時、弟のジョー(山田涼介)と共にネリはある賭場に向かうことになり・・・

ポジティブ・サイド

個人的には冒頭のシーンが楽しめた。映画の中で職場近くの風景がたくさん観られるというのは面白い。Jovianはよく大川沿いを散歩していたりする。大阪都心部で働く人にはお馴染みの淀屋橋、難波、天王寺などの景色を観ると、架空のストーリーにもリアリティが付与される。

 

社会の下層民の描き方もいい。単なる怠惰な人間の集団ではなく、適度にインテリが混じっていたり、あるいはお上に対する反骨精神からの連帯感を発揮したりと、現代性と大阪らしさの両方が盛り込まれている。

 

安藤サクラはまさにインテリ下層民の代表。とある事情により東京から逃げてきた。そして番頭の高城の庇護のもとで詐欺の片棒を担いでいる。当然のように警察からマークされる。また東京の富豪からも常に監視をされている。そんなネリが、弟ジョーと共に起こした事件により、大金を得たものの警察とヤクザを相手に逃走する羽目になる。その過程が堪えられないサスペンスを生み出している。

 

さがす 』に続く、大阪社会のダークサイドと、ウェットな人間関係にあふれた作品。大阪人、関西人ならぜひ鑑賞を。

ネガティブ・サイド

生瀬勝久大阪弁はパーフェクトだが、安藤サクラはやはりネイティブからは遠い。山田涼介は論外。大阪弁の要諦である小さい「ァ」、「ィ」、「ゥ」、「ェ」、「ォ」ができていない。「血」ではなく「血ィ」みたいに発音するのが大阪弁。誰か指導できるスタッフはおらんかったんかいな。

 

さらにこのジョーというキャラクターの設定がブレまくり。自分で自分をサイコパスと言いながら、中盤に友情出演している某キャラにあっさりと撃退される。かと思えば、最終盤にはガンガン人を殺しまくり。強いのか弱いのか、サイコなのかチキンなのか、よう分からん。山田涼介の出てくるシーン全般はノイズに感じられた。

 

後は特殊詐欺組織の脆さか。そこであっさりとそんなこと喋るか?高城の教育はどないなってんの?なんか番頭と聞くと漫画『 魔風が吹く 』の番頭を思い浮かべるのだが・・・ いくら高城が裏社会の大物でも、使っている手下がこんなアホでは、あっという間に警察に摘発されているはず。ここらあたりの警察捜査の過程はかなりご都合主義に感じられた。

 

総評

ストーリーは文句なしに良い。大阪を舞台にしたところや、大道具・小道具に衣装などのプロダクションデザインも素晴らしい。問題はジョーというキャラ、そして天童よしみ江口のりこといった、いくらでもサブプロットを生み出せそうなキャラを多数出しながら、特に彼ら彼女らが活かされなかったところ。それでも、このような社会の暗い一隅を照らそうとするエンタメ作品が日本でも作られ、公開されたということは歓迎したい。関西人はもちろんのこと、日本中の人に観てもらいたい。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

rotten edge

劇中で腐れ縁の訳語としてネリが挙げた表現。なのだが、これは腐れ縁というよりは悪縁や険悪な仲を指す言葉で、日本語の「腐れ縁」が持つ、切れそうで切れない縁というニュアンスはない。腐れ縁は on and off relationship または on/off relationship が最も当てはまりそう。ちなみに rotten edge は

Our love for each other became a rotten edge.
私たちの愛情は剣呑なものになってしまいました。

のように使う。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 アリスとテレスのまぼろし工場 』
『 ほつれる 』
『 オクス駅お化け 』

 

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