Jovian-Cinephile1002’s blog

古今東西の映画のレビューを、備忘録も兼ねて、徒然なるままに行っていきます

『 真・鮫島事件 』 -ジャパネスク・ホラーの夜明けは遠い-

真・鮫島事件 15点
2020年11月28日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:武田玲奈 小西桜子 しゅはまはるみ
監督:永江二朗

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Jovianは1998年大学入学、2002年卒業なので、携帯電話やパソコンが一般に普及していく過程を体がよく覚えている。同時に、2ちゃんねるのようなインターネット世界(梅田望夫が言うところの「あちら側」)にも結構ハマっていた。なので、鮫島事件や電車男のことはよく覚えている。なので、本作にはそれほど期待せずに、淡い郷愁の念のようなものだけを持って劇場へ向かった。甘かった。やはり単なるゴミ、低クオリティのホラー映画だった。

 

あらすじ

菜奈(武田玲奈)はコロナ禍のため、高校時代の同級生たちとオンライン飲み会を開催するが、メンバーが一人足りない。その仲間のボーイフレンドが代わりにウェブ上に現れ、仲間の死を告げる。そして自分自身も謎の死を遂げてしまう。この超常的な現象には「2ちゃんねる」で決して語られることのなかった「鮫島事件」が関わっていて・・・

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ポジティブ・サイド

ない。

 

というのはダメか。ごみ溜めにも美点を見出さねば。

 

街行く人々が皆マスクを着けており、菜奈も帰るや否や手洗いとうがい。今後の映画ではこうした「ニューノーマル」なシーンが当たり前のようにインサートされてくるのだろう。現実のパンデミックの風景を虚構の鮫島事件につなげていく役割は十分に果たせていた。

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ネガティブ・サイド

鮫島事件を超常的な呪い現象に持って行ってしまったことがまず気に入らない。百歩譲ってそこは認めたとしても、なぜ鮫島事件の呪いが発動するよりも前、菜奈の帰り道の時点で怪異が起きているのか。しかもその怪異はどれもこれも手垢のついたクリシェとも呼べなくなったジャンプ・スケアばかり。『 リング 』、『 オーディション 』、『 呪怨 』などのある意味クラッシックな作品から、近年の『 来る 』や『 貞子 』、『 犬鳴村 』、『 事故物件 怖い間取り 』まですべてに共通するようなもの。つまりはジャパネスク・ホラーはこの20年以上、進化していないとも言える。事前の情報をほとんど入れずに鑑賞に臨んだが、開始5分で「ああ、こういう物語か・・・」といきなり慨嘆させられた。だいたい登場人物の死にっぷりが怖くない。というか、殺しっぷりが怖くないと言うべきか。いつまで邦画は貞子の幻影に縛られなければならないのか。

 

鮫島事件の呪いを変に分析しようとする姿勢も気に食わない。どうせやるなら『 シライサン 』のようなスケールで分析および対処してほしかった。せっかく“呪い”をコロナウィルスのアナロジーで説明しようとしているのだから、その呪いを「変異」させようというアイデアは思いつけなかったか。まあ、それも小説の『 リング 』、『 らせん 』、『 ループ 』三部作でネタとしてはある意味では先取りされているのだが。警察に電話もつながらずネットでコンタクトできないのに、まとめサイトには接続可能というのは拍子抜けである。だったら、そこにこそアプローチすべきだろう。呪いをネット中継してしまう、鮫島事件を現代に一挙にインターネット・ミームとして増殖拡大させてしまう。それぐらいのスケールの大きなホラーを構想する力は邦画の世界にはないのか。

 

ストーリー以外の部分でもツッコミどころ満載である。やたらとデカい音を出すエレベーターが、5階で扉が閉まる時にだけ音を出さないのはどういうわけか。重要なアイテムと見せかけたフルートはいったい何だったのか。事件の核心とされる出来事を〇〇したというが、当時の技術レベルではそれは不可能。というか、それが真相なら「語ることができない」事件にはならない。武田玲奈の兄もバイクに乗るならヘルメットをかぶりなさい。その廃墟も到着したのは夜中であるにも関わらず、窓の外が明るいシーンと真っ暗のシーンが混在。勘弁してくれ。撮っている最中、または編集の最中に誰も何も気づかなかったというのか。柏が出てきてEOMに触れられないというのは、いったいどういう了見なのか。

 

Jovianが脚本家なら、超常現象は一切採用しない。「鮫島事件」がインターネット・ミームと化す過程に介在したであろう「不特定多数」の人間が、実はごく少数の人間だけで構成されていた、または高度に発達したAIの仕業だった。その目的は鮫島事件の真相を求めて近づいてきたもののIDまたは情報を全て奪い取り、別人に成り代わる、あるいは人工知能搭載ロボットが人間社会に溶け込んでいいく・・・という筋立てにするだろう。まあ、これも『 アナイアレイション 全滅領域 』や『 エクス・マキナ 』の焼き直しやなと自分でも思うんやけどね。

 

総評

はっきり言って見どころは何一つない。これをわざわざ劇場鑑賞するのは熱心な武田玲奈ファンぐらいだろうが、そうしたファンに対して何らのサービスもない(しゅはまはるみが谷間を拝ませてくれるが)。レンタルまたは配信を待つのが吉である。武田のファンでなければ観る価値なし。これに時間とカネを使うなら、オンラインリアル脱出ゲーム×お化け屋敷「呪い鏡の家からの脱出」の方が投資効率は遥かに高そうだ。ちなみにJovianはポイント鑑賞。製作者側の懐に一銭も与えることがなく満足している。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

get a job

 

「就職する」の意。ただし日本語で就職というと正社員になったということとほぼ同義だが、これはどんな形であれ仕事を手に入れれば使える表現。

 

get a job in 業界・土地

get a job in IT=IT業界に就職する

get a job in Kobe=神戸で就職する

 

get a job with 会社・組織

get a job with NTT=NTTに就職する

get a job with a small restaurant=小さなレストランで仕事を得る

 

と前置詞以降までをセットで覚えよう。

 

現在、【英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー】に徐々に引っ越し中です。こちらのサイトの更新をストップすることは当面はありません。

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