Jovian-Cinephile1002’s blog

古今東西の映画のレビューを、備忘録も兼ねて、徒然なるままに行っていきます

『 サイレントヒル リベレーション 』 -残念な続編-

サイレントヒル リベレーション 30点
2022年8月13日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:アデレイド・クレメンス キット・ハリングトン キャリー=アン・モス ショーン・ビーン
監督:マイケル・J・バセット

マインド・ゲーム 』がまだレンタル中。なので『 サイレントヒル 』の続編を借りてくる。ホラー色が薄まり、宗教色が最初から色濃く出ていたのは色々と残念だった。

 

あらすじ

ヘザー(アデレイド・クレメンス)は、ある事情から父親クリス(ショーン・ビーン)と共に各地を転々としながら生活していた。しかし、18歳の誕生日を目前にして、ヘザーの前に謎の人物が現れ、また父親も姿を消してしまう。家には「サイレントヒルに来い」という血文字が残されていた。ヘザーは同級生ヴィンセント(キット・ハリングトン)と共にサイレントヒルに向かうが・・・

 

ポジティブ・サイド

出るわ出るわのクリーチャーたち。ゲームと映画の『 サイレントヒル 』のugly系のクリーチャーは本作でも見事に表現されている。一押しは人体マネキンパーツで出来た蜘蛛のようなクリーチャー。まるでスティーブン・キング作品に出てきそうな雰囲気。また前作で描かれなかったセクシー看護師アーミーの残虐殺戮描写も本作ではたっぷり登場。グロ描写ファンを喜ばせてくれた。

 

父親クリストファーの尽きることのない娘、そして妻への愛は感動的ですらある。それがヴァルティエル派の信徒の狂信性と鮮やかなコントラストになっている。どちらも人間本来の姿なのが皮肉なところ。クリーチャー(非人間) vs 人間という単純な二項対立ではなく、人間そのものが一種の分裂的な気質を備えた生き物なのだろう。アレッサという虐げられた個人を通して、本作はそのことを強く訴えかけているようである。

 

ネガティブ・サイド

ゲーム、そして前作の大きな特徴でもあった静寂の中に突如混ざる雑音という演出がなくなった。割と速いテンポで次から次へとクリーチャーが出てくるのは良いが、そこにお約束的演出がなくなってしまったのはいただけない。サイレントヒルのサイレントという部分がごっそりそぎ落とされたのは残念至極である。

 

またサイレントヒルに迷い込むことはあっても、サイレントヒルからは逃れられないという前作の悲劇的な結末を、割とご都合主義的に破ってくるのもいかがなものか。前作でクリスタベラを失った教団が、前作以上の影響力を保持しているのも説明がつけがたい。指導者を失った教団に優秀な跡継ぎ(イエスに対するペテロなど)がいれば何とかなる。前作にはそのような描写はなかったし、今作でも一切フォローがなかった。

 

看護師アーミーは個人的にはツボだが、ウッフーン、アッハーンみたいな声は必要か?ゲームを実際にプレーしていないのだが、無言でサクサク相手を滅多刺しにしていく方が共感を呼び起こすと思うが。

 

最大の恐怖のひとつだった三角頭がアレッサの守護者というのは、何か拍子抜けに感じた。二大クリーチャー同士の一騎打ちはアクション映画としては面白いが、ホラー映画としては「なんだかなあ・・」である。

 

最大の問題は、前作が非常に巧みに展開した、怪異に浸食された街とそこで狂信者として生きる集団の恐ろしさの見せ方のバランスが壊れてしまっていることだろう。本作は最初から最後まで怖いのは人間というスタンスである。いや別にそれでもいいのだが、だったらサイレントヒルをタイトルに冠する必要はないわけで。そもそも続編自体が不要だったのかな。それともプロデューサーの監督や脚本家の人選がイマイチだったか。

 

総評

舞台はアメリカだがゲーム制作自体は日本。その日本的な静謐なテイストを良い意味でも悪い意味でもアメリカナイズして映像化したのが本作である。前作を楽しめたのなら、本作は鑑賞不要。まさか本作から鑑賞する奇特な向きはないだろうが、本作から鑑賞したなら、楽しめた楽しめなかったに依らず、前作『 サイレントヒル 』を鑑賞されたい。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

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「聖域」や「聖堂」の意。一定以上の年齢層であれば漫画『 聖闘士星矢 』でお馴染みだろう。animal sanctuary = 動物保護区、wildlife sanctuary = 野生動物保護区のような使われ方をすることも多い。英検準1級やTOEFL、IELTSで言って以上のスコアを目指すのなら知っておきたい。

 

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