Jovian-Cinephile1002’s blog

古今東西の映画のレビューを、備忘録も兼ねて、徒然なるままに行っていきます

『 デシベル 』 -看板・ポスターはネタバレだらけ-

デシベル 65点
2023年11月18日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:キム・レウォン
監督:ファン・イノ

 

韓国映画お得意のサスペンスものということでチケット購入。

あらすじ

とある家に爆弾が届けられ爆発。そのニュースを知った潜水艦の元副長カン・ドヨン(キム・レウォン)のもとに犯人からの電話が入る。次のターゲットがサッカースタジアムだが、そこに仕掛けられた爆弾は一定以上の音量に反応すると起爆までの時間が半減するというもので・・・

 

ポジティブ・サイド

冒頭の潜水艦シーンは『 ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE 』そっくり。もちろん真似たわけではないだろうが、韓国映画はハリウッド映画的な文法を忠実に実行することがある。この時点で期待が盛り上がってきた。

 

一年後、謎の爆破事件が勃発。そこから元副長のカン・ドヨンの苦闘が始まる。途中でなし崩し的に仲間になる記者のオ・デオがめちゃくちゃ良い奴。韓国映画界には味のある三枚目がよく出てくるが、彼もそんな感じ。コミックリリーフが存在するおかげで、そのコントラストとしての爆弾テロリストの恐怖が倍増している。

 

一定以上のデシベルを感知すると爆弾のカウントダウンの残り時間が半減するというのはなかなか怖い。日常の街中の声や音がそのまま凶器と化すからだ。潜水艦の隠密性も音を出さないことから得られるので、潜水艦乗りのカン・ドヨンが音に苛まれるのは観ていて本当に痛々しかった。

 

謎の爆弾魔が犯行に及ぶ動機が明らかになるにつれ、サスペンスが盛り上がる。真相を知ったところから、さらにもう一歩踏み込んでその深層部分を非常に硬質なドラマとして見せつけてくる。ストーリーはカン・ドヨンの家族をも巻き込んで進む。奥さんと娘がとことん追いつめられる本作だが、逆に新しい家族観を提示したとも言える。記者オ・デオが最終盤に放つ質問に対するドヨンの答えは、その場では語られない。しかし、彼の思いが最後の最後に回想される。子曰く「過ちて改めざる、是を過ちと謂う」。人間、ドヨンのように強く生きねばならんなと思わされた。

 

ネガティブ・サイド

爆弾が絡むシークエンスはすべて緊張感がみなぎっているが、終盤の肉弾アクションになると急にクオリティが低下する。細かいカットの連発で、ここはもっと頑張れただろうと思う。軍人同士の格闘戦で、韓国の成人男性のほとんどが兵役経験者ということを考えれば、もっと攻めた演出を監督には施してほしかった。

 

明らかに無関係な一般人をも巻き込むような爆弾設置は、犯人の思想信条上どうだろうか。カン・ドヨンの関係者を徹底的に排除しようとする方が、彼の失ったものとのバランスがとれていると思うのだが。

 

最後に、これは映画の中身とは関係ないが、一言だけ。なんで日本の配給会社や宣伝会社は販促物で盛大なネタバレをかますの?パネルのビジュアルが全部ネタバレしているではないか。のみならず、某映画情報サイトもキャラクター紹介欄でネタバレをかます始末。いや、本作はミステリではないが、だからといってサイトや販促物でネタバレをしていい理由は一つもない。日本の宣伝・配給会社にはもう少し考えてほしいものだ。

 

総評

韓国映画らしいサスペンス。警察をとことんコケにすることに定評がある韓国映画界だが、本作では軍上層部の怠慢や無責任さも堂々と批判している。潜水艦ものだと本邦では『 沈黙の艦隊 』が上映中だが、自衛隊は映画製作にきょぅ力してくれるもので、映画によって批判される対象ではない。それが良いかどうかはさておき、政治や軍事、司法を容赦なくエンタメの形で批判する韓国映画と日本映画のコントラストがここにも見て取れる。単なるサスペンスとしてもなかなかの面白さ。『  白鯨との闘い 』的なサスペンスも楽しめる。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

ヨボ

配偶者への呼びかけに使われる。男女どちらが使っても良い。日本語にすると「あなた」や「ねえ」あたりになるだろうか。ドラマでもしょっちゅう聞こえるし、なんなら日本人・韓国人の夫婦YouTuberもよく使っている。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 月 』
『 花腐し 』
『 首 』

 

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