Jovian-Cinephile1002’s blog

古今東西の映画のレビューを、備忘録も兼ねて、徒然なるままに行っていきます

『 ミッシング 』 -もう少し焦点を絞り込めなかったか-

ミッシング 60点
2024年6月1日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:石原さとみ 青木崇高 森優作 中村倫也
監督:吉田恵輔

 

風邪がなかなか治らないので簡易レビュー。

あらすじ

沙織里(石原さとみ)と豊(青木崇高)の娘の美羽が突然姿を消した。直前まで娘と一緒にいた沙織里の弟(森優作)との関係はギクシャクしたものになり、ネットでは母親に批判的な書き込みがあふれる。唯一、ローカルTV局の砂田(中村倫也)だけは親身に沙織里に寄り添うが・・・

ポジティブ・サイド

6歳の子どもの失踪など考えただけでも胸が苦しくなる。自発的に疾走するわけがないのだから、誘拐または事故に決まっている。本作は美羽の失踪の真相を追うのではなく、そこから見えてくる人間関係の変質や社会の闇に迫っていく。

 

青木崇高の演技が特に良かった。感情の表出をあまり行わない=感情があまり動いていない、というわけでは決してない。最も印象深かったのは蒲郡のホテルの喫煙所。悲しさ、悔しさ、虚しさをないまぜにしたような表情に胸を打たれた。

 

ネット上の無責任かつ批判的なコメントについて、なぜ無関係な人間がそんなことをできるのかと憤りを覚えるが、本作は「無関係な人間だからこそそんなことができるのだ」という視点を提供している。では、我々はどうすべきなのか。関わるしかないだろう。それが直接の癒しになるかどうかはわからない。しかし、関わること、そして関わることでしか得られないものがあるのは間違いない。

 

ネガティブ・サイド

メディアの恣意的な報道とその影響については同監督の『 空白 』の二番煎じに感じられた。また、中村倫也演じる砂田という男に少し尺を割きすぎ。TV局側のサブプロットをもっと削れば、佐織里と豊の二人の物語にもう少しフォーカスできたはず。

 

石原さとみの演技はかなり過剰だったように思う。というか、演技の過剰さと化粧やヘアスタイルが矛盾していたとでも言おうか。ぼろぼろの肌、ぼさぼさの髪で壊れていく様を見せるべきだった。

 

怪しい犯人的な人物をこれ見よがしに出し入れしていたが、元々真相追求型のストーリーではないと分かっているのだから、それもノイズだと感じられた。

 

総評

吉田恵輔監督は『 BLUE ブルー 』のような、非常に小さな輪の中の人間関係を描かせる名手であると思っている。だからこそ同作や『 空白 』のように、本作ももう少しキャラクターあるいはサブプロットを絞ってほしかった。それでも人間たるもの、どうあるべきかについて非常に示唆に富む回答を本作が提示しているのは間違いない。早めに劇場鑑賞を。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

make a prank call

よほど熱心な英語学習者でもない限り知っておく必要性は薄いが、これは「いたずら電話をする」の意。いたずら電話もその悪質性によっては一発で起訴される可能性もあるのではないだろうか、と本作を観て思わされた。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 関心領域 』
『 バジーノイズ 』
『 あんのこと 』

 

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