Jovian-Cinephile1002’s blog

古今東西の映画のレビューを、備忘録も兼ねて、徒然なるままに行っていきます

『 ノンストップ 』 -コメディOK、アクションOK-

ノンストップ 70点
2021年2月18日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:オム・ジョンファ パク・ソンウン
監督:イ・チョルハ

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アクション風味の韓国産コメディだと思い、軽い気持ちでチケットを購入。しかし、なかなかどうして、人間ドラマ要素もしっかりしており、適度なドンデン返しもありの佳作。当たり前のことではあるが、韓国が輸出(あるいは日本が輸入)してくる作品というのはハズレが少ない。

 

あらすじ

揚げパン屋を営むミヨン(オム・ジョンファ)はジャンクショップで働く夫ソクファン(パク・ソンウン)と一人娘ナリの3人で、偶然に当選したハワイ旅行のため、機上の人に。しかし、そこには北朝鮮のテロリスト集団も乗り込んでいた。この状況に、ミヨンの隠してきた能力が発揮され・・・

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ポジティブ・サイド

オム・ジョンファの魅力が爆発している。Jovianよりかなり年上だが、若々しさはあちらの方がはるかに上。芝居の一つひとつがとてもエネルギッシュだ。ことあるごとに「オッケー」とジェスチャー付きで言うのだが、その笑顔もとびっきりチャーミング。石田ゆり子とほぼ同年代ながら、石田ゆり子には決して出せない韓国のアジュンマ(韓国語でおばちゃんの意)のオーラも発揮している。そして過去は凄腕の工作員で、その格闘能力や戦術眼は今も健在というギャップ。キャラ属性だけ見ればよくあるタイプだが、その奥行きが深く、幅が広いのだ。

 

夫役のパク・ソンウンも負けていない。はっきり言ってうだつの上がらないダメ夫にしてダメ父親。駄々をこねるかの如く叫びまくる演技に、一瞬役者本人の精神年齢を疑ってしまうが、それだけ迫真の演技になっているということである。邦画や日本のテレビドラマでは、これほどストレートに妻への愛情を表現する男というのはなかなか見られない。

 

この夫に負けず劣らずのコミックリリーフが機内の男性CA。スパイ活劇に憧れを持っており、平常時もピンチの時も、とにかくそこにいるだけで場をしっかりと和ませ、時に大いに笑わせてくれる。もともと三枚目の役者だが、それに輪をかけて顔芸が最高である。とにかく韓国の役者の芝居はエネルギーに満ち溢れており、アホな演技をする時は突き抜けてアホである。なので、こちらも演技力や演出に注目する必要なく、素直にクスクス、ワハハと笑うことができる。

 

笑いだけではなく、社会的な風刺もところどころでしっかり効いている。国会議員が非常時でも横柄な態度を取り、上流階級のマダムは臨月の息子の嫁をハワイに連れていき、そこで出産させようとしている。とある映画監督と映画スターの秘話(あくまでストーリー内での)もこっそりと盛り込まれており、韓国の映画業界そのものをチクリとやりつつ、笑いのネタにもしている。当然、北と南の緊張関係が下敷きにあるので、コミカルな中にもシリアスが、しかしシリアスな中にもコミカルさがある。ハイジャックものというと、どうしてもシリアスな展開にならざるを得ず、そこは本作も例外ではない。敵であるテロリストたちの内部分裂あり、意外な黒幕の登場ありと、序盤のユーモアはどこへやらというハラハラドキドキの終盤から、ちょっとしたドンデン返しの利いたハッピーエンドまで、まさにノンストップだ。

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ネガティブ・サイド

予告の段階でミヨンが元凄腕のエージェントだということは判明しているのだから、序盤のちょっとしたパン作りのシーンに、ミヨンには非凡な身体能力や運動神経が備わっているということを見せる演出が欲しかった。機内のビジネスクラスでマカデミアナッツをピシュンと放る演出は、タイミング的に遅く、また演出としても大仰すぎる。

 

韓国映画で毎回思うのは、北朝鮮のスパイや工作員が有能すぎるということ。まさか本当に『 サスペクト 哀しき容疑者 』のドンチョルのような奴が定期的に出てくるはずもないだろう。

 

冒頭の潜入作戦の時のミヨンをアン・セラ、回想シーンのソクファンの馴れ初めの時のミヨンをオム・ジョンファが演じるというのは、少々無理があると感じた。これならミヨンは全てオム・ジョンファ、その代わりにアン・セラ役の女優のシーン、たとえば機内の映画のアクションシーンや中盤以降のバトルシーンでのアシストなどで増やした方が、一貫性は保たれたと思われる。

 

総評

韓国産の映画の勢いはなかなか衰えない。コメディにしてもヒューマンドラマにしても、役者が振り切れた演技を見せるからだろう。テンポも良く、ユーモアも冴えている。韓国映画の入門としては、本作ぐらいがちょうど良い。高校生や大学生のデートムービーにもなりうるが、やはり本作は中年または熟年カップルにこそ観てもらいたい。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

OK

そのまま「オーケー」の意味。使い方は日本も韓国も変わらないようだ。ただし、この語が応答ではなく形容詞になると話が変わってくる。この場合、OKというのは「まあまあ」とか「可もなく不可もなく」という意味になる。

 

A: How did you like that restaurant?

  あのレストラン、どうだった?

B: It was OK.

  まあまあだったな。

 

X:Did you watch this movie?

  この映画は観た?

Y:Yeah, that was an OK comedy.

  ああ、可もなく不可もないコメディだったよ。

 

などが用例である。

 

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