Jovian-Cinephile1002’s blog

古今東西の映画のレビューを、備忘録も兼ねて、徒然なるままに行っていきます

『 ナイル殺人事件 』 -謎解きを楽しもうとすべからず-

ナイル殺人事件 50点
2022年3月6日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ケネス・ブラナー ガル・ガドット
監督:ケネス・ブラナー

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オリエント急行殺人事件 』に続くエルキュール・ポワロもの。仕事が超絶繁忙期のため、簡易レビューを。

 

あらすじ

巨額の遺産を相続したリネット(ガル・ガドット)は友人のフィアンセとの略奪婚を果たす。しかしエジプトを新婚旅行中にリネットが殺害されてしまう。ハネムーンに集まった人々は実は全員リネットに怨恨を抱いていた。名探偵エルキュール・ポアロケネス・ブラナー)は事件の真相解明に挑むが・・・

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ポジティブ・サイド

ドロドロの愛憎劇として観るなら、かなり良い出来映え。アガサ・クリスティは、友好的な登場人物たちが実は裏では・・・という人間関係を描く最初の世代にして名手である。現代でこそ意外性はないのだが、クリスティの時代はこれが斬新だったのだ。世界が今ほど近代化・都市化しておらず、コミュニティの中の人間関係が十分に可視化される時代だったのだ。だからこそリネットが言う「私に近づいて来る人間は、みんな私のお金が目当て」という言葉に説得力が出ている。

 

巨大なピラミッドやラムセス2世の神殿、そしてナイル川をクルーズする豪華客船とエジプト旅行の雰囲気を味わうことができた。色々と緩和されてきたとはいえ、海外旅行はまだまだ難しそう。劇場で異国情緒を味わうのも一興かもしれない。

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ネガティブ・サイド

ねじれた家 』と同じく、ハウダニットを深く考えてはいけない。ホワイダニットだけを考えるべき作品で、その意味ではミステリとしては非常に弱い。一応、最後の最後で筋の通った謎解きはなされるが、推理としては噴飯もの。「説明がつく」ということと「実行することができる」は別のこと。あまりツッコミすぎると野暮だが。

 

ポワロの若き日のエピソードは必要だったろうか。愛する人を偲ぶあまりに独身のまま老年に差し掛かろうとするのは確かに物悲しくはあるが、そのことが本編に深みも奥行きも与えているようには見えなかった。『 ダークナイト 』のトゥーフェイスを見せられても意味が分からない。まあ、更なる続編への布石なのだろうが。

 

総評

悪い作品ではないが、面白いとも感じない。超豪華な火曜サスペンス劇場という感じである。どうせなら『 アクロイド殺し 』を現代風にアレンジして映画化してみてはどうか。超絶技巧が要求されるが、挑んでみたいと思う脚本家は数多いるだろう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

square

色々な意味がある語だが、ここでは人物を指して「四面四角」という意味。He is a square. = あいつは四面四角な奴だ = 融通が利かない面白味のない奴だ、という意味になる。fair and squareと言えば、正々堂々、公明正大という意味にもなる。Let's fight fair and square. = 正々堂々と戦おうじゃないか、という意味。 

 

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