Jovian-Cinephile1002’s blog

古今東西の映画のレビューを、備忘録も兼ねて、徒然なるままに行っていきます

『 渇きと偽り 』 -乾いた大地の人間関係-

渇きと偽り 70点
2022年9月25日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:エリック・バナ
監督:ロバート・コノリー

 

サイモン・ベイカー主演・監督『 ブレス あの波の向こうへ 』以来のオーストラリア映画の劇場鑑賞。

 

あらすじ

連邦警察官アーロン・フォーク(エリック・バナ)は旧友ルークの葬儀に参列するため、20年ぶりに故郷の小さな町に帰ってきた。ルークは自身の妻子を射殺した後に自殺したとされていた。プライベートで捜査に乗り出したフォークは、自分たちの若い頃に起きたある事件と、今回の事件がつながっているのではないかと感じ始め・・・

 

ポジティブ・サイド

どこまでも無慈悲に広がる乾いた大地が、よそ者を拒むかのように画面を支配する。主人公のアーロンも全く歓迎されない。アメリカの警察映画などで、FBIが片田舎の地元警察や地元住民に相手にされないのと同じような展開で、それ自体は珍しくもなんともない。本作はそこに、アーロン達の身に起きた過去のある事件を効果的に織り交ぜてくる。これによって、中央と田舎の対立以上の火種が事件そして町に潜んでいることが浮き彫りになってくる。

 

アーロン自身の捜査によって少しずつルークの事件の情報の断片が手に入ってくるが、それと並行するようにアーロン自身の過去の回想シーンが挿入される。なぜアーロンはこれほど町で歓迎されないのか。逆になにがアーロン自身をこれほど捜査に駆り立てるのか。そのあたりの事情が徐々に明らかになるペースが絶妙である。「なるほど」と「それは何だ?」と感じさせる塩梅がちょうどよい。脚本および編集の妙味だなと感じる。

 

怪しげな人間やきな臭い人間関係が浮かび上がっては消えていく。まるで町そのものが大きな闇を抱え込んでいるかのように、アーロンの捜査はいいところまで行くたびに袋小路に入ってしまう。しかし終盤に思いがけない形で真相に迫るヒントが浮上、物語は一気に最終盤へ。コロナ大流行前の世界のニュースといえば、オーストラリアの超大規模森林火災だったことを覚えている人も多いだろう。そうした大災害の予感を感じさせるクライマックスは、それまで散々干ばつに悩まされてきた土地および住民の描写のおかげで、より迫力を増していると感じた。

 

ミステリ風味たっぷりのサスペンス、サスペンス風味たっぷりのミステリとも言える。こうしたジャンルを好む向きなら、本作を鑑賞しない手はない。

 

ネガティブ・サイド

序盤の展開にもう少しテンポの良さが欲しい。少し眠気を誘われてしまった。

 

ティーンエイジャーのアーロンと現在のアーロンがまったく似ていない。なんかもう顔も体も骨格レベルで別人である。もう少し顔かたちが似た若い俳優はいなかったのか。

 

ネタバレを避けるため詳しくは書けないが、過去の事件の真相と現在の事件の繋がり方(と言っていいのかどうか・・・)には拍子抜けである。現在の事件の真犯人が最後に自暴自棄になってやろうとしたことは「まじでそれはヤバい」感があったが、犯行の理由はあまりにもありきたり。もっと衝撃的な真相が欲しかった。

 

総評

サスペンスは最後まで持続するが、ミステリ部分のカタルシスが最後はとても弱い。ただし、ちょっぴり残念な真相に至るまでの展開は very mysterious and suspensful 。様々な人間関係や人間模様は徐々にあらわになる中盤の展開は間違いなく一級品。警察ジャンルが好きな人ならきっと楽しめるはず。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

second nature

第二の性分・習性」の意。しばしば become second nature という形で使う。

Practice this move until it becomes second nature to you.
この動きが自然にできるようになるまで練習しなさい。

スポーツ、あるいは演奏や美術品・工芸品作成の指導時に使うことが多そうな表現である。

 

現在、【英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー】に徐々に引っ越し中です。こちらのサイトの更新をストップすることは当面はありません。

I am now slowly phasing over to https://jovianreviews.com. This site will continue to be updated on a regular basis for the time being.